深刻化する「不動産の放置」と新しい制度

少子高齢化と人口減少が進む日本において、「不動産の放置」は深刻な社会問題の一つとなっています。所有者が亡くなった後に相続手続きがなされず、名義が放置されることで、いわゆる“所有者不明土地”が増加。これが地域の安全性や土地活用の大きな妨げとなっています。
この問題の解決に向けて創設されたのが、「所有不動産記録証明制度」です。

 

司法書士としてこの制度を解説すると、これは個人が全国に所有している不動産を一覧的に把握できる証明書を取得できる仕組みです。これまでは各地の登記簿を個別に調査しなければならず、相続人にとって大きな負担となっていました。しかし本制度により、被相続人の不動産が可視化され、相続手続きの円滑化が期待されています。

本質的な課題は「情報の不足」と「想いの不在」

とはいえ、制度が整っただけで問題が解決するわけではありません。現場に立つ人間として感じる本質的な課題は、「情報の不足」と「想いの不在」にあると考えています。
相続人が不動産の存在を知らない、あるいは知っていてもその不動産の価値や背景がわからないために、判断が先送りされてしまうのです。
ここで重要になるのが、「縁ディングノート」の活用です。

縁ディングノートで「想いの背景」を伝える

縁ディングノートプランナーの立場から申し上げると、このノートは単なる財産目録ではありません。それは「人生の記録」であり、「想いの伝達ツール」です。
不動産についても、所在地や評価額といった形式的な情報だけでなく、次のような背景を記しておくことが極めて重要です。

 

・なぜその土地を取得したのか?
・どのような思い入れがあるのか?
・将来、どのようにしてほしいのか?

 

たとえば、先祖代々の土地であれば、その歴史や家族にとっての意味を伝えることで、単なる“売却対象”ではなく“守るべき資産”として認識されるでしょう。逆に「維持が難しければ売却してよい」という意思が明確であれば、相続人は迷わず次の行動に移れます。

“動ける相続”にするために

多くの相続案件に関わる中で感じるのは、不動産の価値以上に「意思決定の材料があるかどうか」が成否を分けるということです。
情報が不十分であれば、相続人同士で意見が対立し、誰も判断を下せないまま時間だけが過ぎてしまいます。その結果、固定資産税の負担だけが残り、不動産は荒廃していく――こうしたケースは決して珍しくありません。
「所有不動産記録証明制度」は、見える化によって相続の第一歩を支えます。しかし、それだけでは“動ける相続”にはなりません。そこに縁ディングノートという「想いの可視化」が加わることで、初めて相続人は安心して判断できるのです。

「制度」と「想い」の両輪でつなぐ未来

これからの時代に求められるのは、「制度」と「想い」の両輪による資産承継です。
単に財産を渡すのではなく、その背景や意図まで含めて伝えていく。その積み重ねが不動産の放置を防ぎ、社会全体の課題解決につながります。
司法書士として、そして縁ディングノートプランナーとして、私はこれからも「争わない相続」「迷わない承継」を支援し続けていきたいと考えています。不動産を“負動産”にしないために、今できる一歩として、ぜひ縁ディングノートに目を向けてみてください。

 

(文責)上木 拓郎(うえき たくろう)