もうすぐ春のお彼岸ですね。
「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、春のお彼岸は、長い冬を越え、ようやく訪れるやわらかな季節の節目でもあります。
けれどお彼岸は、単なる年中行事ではありません。
「彼岸」とは仏教の言葉で、“あちら側の岸”という意味です。
私たちが生きているこの世界を「此岸(しがん)」、そして悟りの世界やご先祖さまのいる世界を「彼岸(ひがん)」といいます。
春分の日は、太陽が真東から昇り、真西に沈む日。
西方に極楽浄土があると考えられてきたことから、この日は此岸と彼岸がもっとも通じやすい特別な日とされました。
だからこそ私たちは、この時期にお墓参りをし、ご先祖さまに手を合わせるのです。
春のお彼岸にいただくのは「ぼたもち」。
春に咲く牡丹(ぼたん)の花にちなんで名付けられました。
秋のお彼岸の「おはぎ」は、秋に咲く萩の花からきています。

昔の人は、季節の花に想いを重ね、食べ物の名前にまで心を込めました。
そこには、ご先祖さまへの感謝と、家族の無病息災を願う祈りが込められています。
私は、縁ディングノートをお伝えする立場として、よくこう感じます。
お彼岸は、「自分もいつか彼岸へ渡る存在である」ということを、静かに思い出させてくれる日なのだと。
死を怖がる必要はありません。
けれど、目を背けてよいものでもありません。
ご先祖さまに手を合わせるその姿は、未来の子や孫から見れば、やがて「ご先祖さま」となる私たちの姿です。
そう考えると、お彼岸は“過去を敬う日”であると同時に、“未来に責任を持つ日”でもあるのではないでしょうか。
縁ディングノートは、財産の整理のためだけのものではありません。
想いを言葉にするもの。
感謝を残すもの。
そして家族とのご縁を、次の世代へ橋渡しするものです。
命は、私ひとりで始まったものではありません。
数えきれないご先祖さまの命のバトンがあって、今の私がいます。
そのバトンを、どう渡していくのか。
・今、誰に感謝を伝えたいのか
・もし明日が最後の日だとしたら、何を残したいのか
・家族にきちんと伝えておきたいことは何か
そんな問いを、自分自身にそっと投げかけてみる。
それが縁ディングノートを書く第一歩です。
書き始めるのに、特別な準備はいりません。
完璧である必要もありません。
けれど、お彼岸は背中を押してくれる絶好の機会です。
手を合わせるだけで終わらせず、
そのあとにほんの10分、ペンを持ってみる。
ご先祖さまを敬うという日本人の美しい文化は、決して過去だけのものではありません。
その心を、今を生きる私たちがどう形にするかが大切です。
縁ディングノートは、死の準備ではなく、
“どう生きるか”を整える道具でもあります。
春のやわらかな陽ざしの中で、
ぼたもちをいただき、手を合わせ、そして未来に想いを馳せる。

彼岸と此岸を結ぶのは、祈りだけではありません。
想いを言葉にする、その一行かもしれません。
今年の春のお彼岸が、
あなたにとって「命のご縁」を見つめ直す時間となりますように。
そしてその想いが、やさしく未来へと受け継がれていきますように。