理事の竹内みどりです。縁ディングノートを書き進めるうちに、生前、父方の祖父が話していた「祖母の実家は神社だったらしい」という言葉がずっと心に残っており、祖母のことをもっと知りたいと思うようになりました。祖母は控えめな人で、家族のことをあまり語らなかったため、昔聞いた祖父からの話と戸籍をもとにそのルーツをたどってみることにしました。
1 古い記憶を思い出して
かつて祖父から聞いていた情報は、
①祖母の出生地は長崎県平戸市であること、
②祖母の実家が神社であること、
③司馬遼太郎の小説『韃靼疾風録』にも登場する由緒ある神社であること(まだ読んでいないので実際には不明です)、
④台湾の英雄、鄭成功が関係している、
というものでした。
古い戸籍をみると古い地名になっているので、まずは鄭成功に関係している場所を手掛かりに訪ねました。すると、鄭成功記念館の横に「金毘羅神社」があることが判明しました。そこには鄭成功がお手植えをしたといわれるナギの木があり、石碑と戸籍を合わせてみると、私の曽祖父の代まで私のご先祖様が宮司をつとめていたことがわかりました。金毘羅神社こそが祖母の実家の神社でした。その後、神社の土地を、相続人である孫(祖母の従妹)が、金毘羅神社に寄贈されたことが石碑に記されておりました。

2 地元の人への聞き取り調査
もう少し調べたいと、神社の近くのかまぼこ屋さんに立ち寄ってお話を伺いました。「峯野さん(祖母の旧姓)? 今はもうこの辺にはいないねぇ」と地元の方が教えてくださり、時の流れを感じました。けれど、その言葉からも、子どものころ祖母の送ってくれたストローに包まれたかまぼこからも、確かにこの土地に祖母の家族が生きていた証が感じられました。境内に立つと、潮風が頬をなで、木々のざわめきが心に響きました。祖母もこの景色を見ていたのだと思うと、不思議な懐かしさに包まれました。名古屋で暮らす私にとって平戸は遠い場所ですが、こうして訪ねることができたのは本当に幸せなことでした。そして、一緒に旅に付き合ってくれた主人に心から感謝しています。
3 ルーツの旅を終えて
戸籍を調べ、実際に現地を訪ねることで、自分のルーツを知ることができました。紙の記録の中(戸籍)だけでなく、私の体の中に、確かにご先祖様が生きた想いと歴史が息づいていることを感じることができました。だからこれからの人生も、ご先祖様に恥ずかしくないように生きていかなくてはいけないな、と思い直すことができました。「縁ディングノート」は、過去を整理するためのものではなく、家族の「縁」を未来へとつなぐための大切な道しるべなのだと、改めて感じました。

(文責:理事 竹内みどり)