筆者は法律事務所に21年勤務し、現在は法律事務所内の相続コンサルタントとして活動をしております。 

1 「縁ディングノートは」想いを伝えるもの 

近ごろ、「縁ディングノート」に想いを綴る方が増えてきました。縁ディングノートは法律的な効力を持つものではありませんが、大切な人へ自分の気持ちを残すためのとっても想いのこもった温かいノートです。好きだった音楽や食べ物、大切な思い出、これまで生きてきた自分の歴史、介護や医療の希望、そして家族への感謝の言葉など、普段なかなか口にできない想いを素直に書き残せます。しかもそれを書き記すことで、これからの人生をどう生きていこうか、という考えもまとまってきます。 

2 争いを避けるためには 

一方で、財産の分け方や相続といった法的なことは、残念ながら縁ディングノートだけでは不十分です。ここで力を発揮するのが「遺言書」です。遺言書は、被相続人の法律効力を持った意志となるため、家族が迷ったり、思わぬ争いが起こったりするのを防いでくれます。特に、複数の相続人がいる場合や特定の人に財産を託したい場合などは、遺言の有無が家族の関係性に大きく影響します。その他に、離婚をして前妻との間に子どもがいる方、経営者の方、おひとり様の方、相続人が兄弟になる方などは、遺留分等を考慮した遺言を残された方がいいでしょう。つまり、縁ディングノートは「心のメッセージ」を、遺言は「法律の保証」を与えてくれる、大切な二本柱なのです。 

3 人生最後のラブレター 

この二つを一緒に準備しておくことで、気持ちも希望も、きちんと未来へと届けられます。縁ディングノートに込めた「ありがとう」や「これからも幸せでいてほしい」という想いと、遺言でしっかり守られた安心感。その両方が合わさることで、大切な人へ贈る“人生最後のラブレター”になるのです。 

例えば、「長年連れ添った伴侶には感謝を、子どもたちには好きな夢を追ってほしい」という想いをノートに残しつつ、遺言によってそれぞれが安心して暮らせる環境を整える。そんな形で準備すれば、残された方々は悲しみの中でも前を向く力をもらえるでしょう。 

4 これからの人生を楽しく生きていくために 

「縁ディングノート」と「遺言」をセットで用意する準備が、「死を考える準備」ではなく、「これからも愛する人を支える準備」、そして何より、「自分のこれからの人生を有意義に生きていくための準備」となります。 

ここで考えてみてください。何も準備をしないでこのまま生きている10年後の自分と、縁ディングノートを書いて残された時間を効率的に生きている10年後の自分、どちらが理想の自分になっていますか?ちょっと勇気を振り絞って立ち止まることで、明るい未来を手に入れることができます。「縁ディングノート」と「遺言」は、あなたのこれからの人生をやさしく未来へとつなぐ贈り物になるはずです。

 

(文責:理事 竹内みどり)