こんにちは。
映画「米寿の伝言」プロデューサーをしております西本浩子です。
まず始めに、どのようにしてこのストーリーが出来上がったのか、お話ししたいと思います。
1 「米寿の伝言」ができるまで
私は小さい頃から父が大好きでした。どんな人にも、どんな時にも変わらない。娘に対する私にも決して上からではない。いつも対等に話してくれる父をとても尊敬していました。そんな父は若い頃、役者になりたいという夢を持っていました。小学校から演劇部に入り、大学の時には劇研究会に所属してアマチュアとして舞台に立っていました。
しかし、弟が早くに亡くなり、一人っ子になってしまった為、両親を安心させるもっと安定した仕事をということで、役者の道を諦め先生になりました。
高校教員、大学教授と終えた後、役者である孫の健太朗、銀二郎の舞台をよく見にきてくれました。
その時、本気のダメ出しをしている姿を見て、「あれ?なんか違うな?父の心の奥底にはまだ役者の魂が残っているんじゃない?」と私は気づいたのでした。
そして、「じいちゃんを舞台に立たせてあげてほしい」と子供達に頼み、長男の同級生であった脚本家ガクカワサキさんに、父を主役にしたストーリーを書いてもらいました。
2018年8月大阪で舞台「米寿の伝言」
2019年9月東京で舞台「米寿の伝言」
どちらも大成功に終わり、私達は、満足していました。
しかし、世の中にコロナというものが現れました。
父と母は、「毎日人にも会えないし、ご飯も食べに行けないしつまらんわ」って言ってふさぎこんでいました。
世の中で、エンタメが生活には不必要なものだと言われ、周りにいる役者さんが、気落ちし、鬱になっていく人達が増えました。
みんなを元気にさせたい、と持ち前の私のサービス精神がうずき、気がついたら子どもたちに、「米寿の伝言の映画を作りたい」と、言っていました。
なぜなら舞台「米寿の伝言」を見た沢山のお客様が、「80過ぎたおじいちゃんがあんなに頑張っているのを見たら元気が出た」と言っていたのを聞いていたからです。
数えきれない程の多くの方の協力を得て、2022年11月撮影。翌年6月に出来上がりました。
2 家族で同じ方向を見ること
子供が小さい頃は、子ども中心で、運動会で走っている姿を応援したり、親が子供を応援したりするというシーンが多いと思います。今回が逆です。俳優になりたいという親の夢を子が叶えるということで、子供と孫、三世代で映画作成という同じ方向を見られた事は、本当に幸せなことでした。お互い本気だからこそ、思い切り喧嘩もしました。まず父の目力が変わりました。イキイキとしている様子を横で見て「お父さん、かっこいい」と思え、そして、孫である息子たちが、自慢のじいちゃんだと誇りに思っていることがとてもうれしかったです。
今年、5月15日、父は本当の米寿になりました。
当初、舞台「米寿の伝言」が始まった時は、81歳。「僕の米寿の時にはお祝いに来てね」と言っていたけど、まだまだ先の話で、その時生きているかどうかもわからないと思っていたのが、現実になったのです。
当時の共演者の方も大阪から駆けつけてくれ、池袋シネマロサで満員のお客様の中、皆にバースデーソングを歌ってもらい米寿のお祝いをしました。
88歳でイキイキと生きている姿を見て、私達家族だけでなく、客席の皆様全員が喜んでくれていました。
父の為に始めた「米寿の伝言」でしたが、私達がもらった最高のプレゼントとなりました。
3 親子で縁ディングノートを書くのがおすすめ
父があまりにもキラキラしていったので、「親孝行だよね」と言われることが増えました。「親に刺激を与える事」、それも親孝行の一つになるんだなと、自分でも新しい発見をしました。
シニアに刺激を与えることは、やはり私達子供世代の力添えが必要かもしれません。でも少し力添えができたなら、こんな素晴らしいプレゼントがあるんだよと皆様に伝えたいです。
そこで私は終活の勉強を始めました。そんな時に出会ったのがこの家族のご縁をつないでいく「縁ディングノート」です。
先祖の誰か一人でも抜けたら今の私は存在しない。あの出来事が、この出来事が、今を作っている。私達が生まれてきたことは奇跡です。いつそれが終わるのか、誰にもわからない、だからこそ、生きている間に自分の人生を振り返り、未来に向けて共有しておきたいと思います。そんなことを、縁ディングノートで改めて感じました。
また、親の財産のこと、お金や保険のこと、普通に聞くのは聞きにくいです。特に元気なうちに聞くのは、親の財産ねらっているのかと思われてしまいます。
そんな時に、「縁ディングノート」を家族で一緒に書くことに取り組めたら、家族のつながりを感じる中で、聞きたいこと、聞きにくいことを自然と引き出せるのではと思います。親子で一緒にやる共同作業というのは、人生でそんなにもありません。共同作業を実践した私から言えることがあります。
親との共同作業は、この上ない幸せな時間です。
優しく縁を紡ぐ時間になります。
これからも一緒に未来を作りたいと思います。