筆者は法律事務所に21年勤務し、現在は法律事務所内の相続コンサルタントとして活動をしております。
1 経営者にとっての縁ディングノートとは
経営者は、日々さまざまな判断を求められ、多くの責任を背負う立場です。筆者もいつもそんなプレッシャーと戦っている一人です。そんな経営者の頭の中には、将来の構想や信念、社員への想いなど、たくさんの「大事なこと」が詰まっています。
しかし、それらをきちんと言葉にして残している方は、意外と少ないのではないでしょうか。
「縁ディングノート」は、自分のこれまでの人生を振り返り、大切な人への想いや、ご自身のこれからの生き方について考えるためのノートです。終活の一環として注目されていますが、実は経営者にとっても、とても意味のあるものです。
2 なぜ縁ディングノートを書く必要があるのか
経営者が、突然病気や事故で判断力を失ってしまった場合、とても大きなリスクを伴います。弊社のお客様でも、社長が突然お亡くなりになり、大変なことになりました。会社の方針、事業承継の意思、それに伴う株式の扱い、また取引先との関係などがわからなくなり、現場は大きく混乱してしまうことがあるからです。特に中小企業では、いい意味で経営者の判断で重要なことが決めることが多く、また経営者の個人の信用に支えられていることが多いため、「社長がいないと何も決められない…」という状況に陥りやすいのです。
縁ディングノートに、たとえば「自分の後を継いでほしい人」「社員や取引先への想い」「万が一のときの希望」などを書いておくことで、いざというときに周囲が判断しやすくなります。また、自分の思いや理念を書き記すことで、客観的に見ることができ、会社の未来を考える上でも新たな気づきが得られることもあります。
3 もしものとき、会社と大切な人を守るために
縁ディングノートプランニング協会で使用しているテキストは、とても長いですが、遺言書のようにかた苦しいものではありません。書く内容も、形式も自由です。「ありがとう」と伝えたい人へのメッセージを書いてもいいですし、これまでの人生で感じたことや大切にしてきた価値観を記載してもかまいません。
経営者の人生には、多くの人とのご縁やストーリーがあります。その「縁」を未来につなげていくために、縁ディングノートはとても役に立つツールです。自分史を作り、社史のように冊子を作ったり、それを漫画にしたりして、お得意様にお配りされている方もいます。
経営者はもちろん法的効力のある遺言書は必要です。でも遺言書を書く前のご自身の考えをまとめるために、縁ディングノートを活用しない手はありません。ご自身のためにも、大切な会社や家族のためにも、一度手に取って書いてみてはいかがでしょうか。
(文責:理事 竹内みどり)