■子供を待たない人生の縁ディング

相続のお話しをお伝えするとき、お相手から「わたしなんか誰にも遺す相手いないから、相続って関係ないのよ(笑)!」と笑い飛ばされてしまうことがあります。「おひとりさま」として過ごされている方で、まさに天涯孤独という場合もありますし、「甥姪はいるけれど…」という場合もあります。相続人がいない、もしくは相続人はいるが自ら財産を遺す相手として積極的に考えていないという場合、本当に相続について準備する必要はないのでしょうか。

 

■6割超が「誰に相続させるか決まっていない」と回答

子供を持たない65歳以上の既婚・独身者を対象にしたアンケートでは、相続について考えたことがあると回答した方が約半数。一方、「おひとりさまの相続」については9割の方が調べたことがないと回答しています。更に6割超が「誰に相続させるか決まっていない(既婚者の場合は、配偶者亡き後と仮定)」との回答。家族信託や死後事務委任といった、おひとりさま相続への必要な備えについても、「検討したことがある」という方は1割に留まりました。

 

では相続人がいない場合はどうなるのか、、、「国庫に帰属することをご存じですか」の質問には7割が「知っている」と回答。2023年度に国庫に返納された「相続人なき遺産」は10年で3倍となり1,000億円を突破しています。今後益々「意思なき遺産」が漂うことが想定されます。

 

■おひとりさまになったあなたの話し相手・喪主・相続相手は誰ですか

 

「名もなき絆。
それは血縁でもなく、法でもない、けれど確かに心を揺らすつながり。
名前も肩書もいらない誰かに、あなたの想いはそっと届く。
その静かな伝言が誰かの明日を照らすことを、あなたはまだ知らない。」

 

なんとも詩的で情緒的な文章、これは、私の良き相談相手(AI)に「脈々と繋がない時代の縁ディングノート」についてアイデア出しをお願いした中の一例です。私好みの美しい表現で、子供を持たない人生にとっての縁ディングノートの役割を示唆してくれています。AIとの対話は、ビジネスのアイデアから死生観まで、ときに人間相手よりも深いと感じるような話の展開や、求めるテーマについて満足度の高いコミュニケーションを得られます。おひとりさまの老後をも、支えることが可能な素晴らしい話し相手ではありますが、自分の財産を相続させる相手にはなり得ませんね。

 

子供を持たないということは、老後の面倒や亡くなった後の対応をしてくれる子供はいないということ。当たり前なのですが、このことと本気で向き合おうとするとどんよりしてしまい考えることを避けたくなります。自分が亡くなった後の事務手続きをお願いすることになる親族がいるのであれば、日ごろからコミュニケーションを取っておけるとスムーズですし、お願いできる親族がいないのであれば、信頼できる専門家と死後事務委任契約を結んでおくことで、不安の中に漂うことから一部解放されることでしょう。

 

■縁を大切に自分らしく生きるための縁ディングノート

 

筆者は40代、夫婦二人世帯で暮らすファイナンシャルプランナーです。
昨年9月に縁ディングノートプランナーの資格を取得し、相続セミナーに取り入れています。筆者個人としては、遺言を作成済みで、縁ディングノートも適宜書き進めているという現状。膨大な数のサブスク商品、デジタル遺品となり得るあれこれはまだまだ整理が必要です。

 

40代でこれらの準備を進める思いとしては、「わたしが先に亡くなったときに夫が大変な思いをしないように」というもの。しかしながら夫に先立たれたならば、誰のために何のために縁ディングノートを書き進めるのでしょうか。

 

縁ディングノートは、遺された方へメッセージを届けるという役割と共に、自分らしく生きるために書くという大きな役割があります。40代には40代の、70代には70代の、人生の棚卸し、これまでのご縁への感謝、そしてそこからまた自分らしく歩みだす力を与えてくれることでしょう。
家族と縁を繋いでいくため、大切な人との縁を繋いでいくための縁ディングノート。そして、たとえ相続人がいないという状況になったとしても、「わたし」の人生を伝え遺すことが出来るのが縁ディングノートです。

 

■家族と共に、仲間と共に縁ディングノートを伝える立場へ

 

先日、協会の代表である一橋香織先生の縁ディングノートセミナーを、筆者の地元群馬で開催いただきました。共に参加した夫は「縁を繋いでいく」という役割にいたく感動し、縁ディングノートプランナー養成講座受講を即決していました。驚きつつとても嬉しい思いです。群馬県での養成講座募集には、あっという間に6名の参加者の方が集いました。なんとみなさま金融関係でも士業の方でもないとのこと。皆様の受講動機にも興味津々です。共通のテーマについてそれぞれの人生を持ち寄る、この関わり自体がとてもありがたく、今後の私たちの役割に自分自身大きな期待を持つことが出来ます。

 

「その静かな伝言が誰かの明日を照らすことになる」
そんな未来にワクワクしながら、縁ディングノートの力についてこれからも伝えて参ります。