1 初めての縁ディングノート書き方セミナーを開催したキッカケ

筆者が「縁ディングノートプランナー」として活動を始めることになったのは、仕事を通じて感じたある疑問がキッカケでした。

筆者は不動産業、特に相続や空き家の相談を受ける機会が多い宅建業者です。現場では「相続で兄弟が揉めてしまった」「家の処分が進まず固定資産税だけがかかっている」といった相談が後を絶ちません。

そのたびに、「もしも遺言書があれば、こんなことにはならなかったかも」と痛感します。

 

しかし現実には、日本で遺言書を書いている人は全体のわずか1割程度。

多くの方が「うちは争うほどの財産なんてないから」と言いながら、いざ相続が発生すると、兄弟間で意見が食い違い、家が放置され、空き家になっていく。

筆者はその現場を何度も見てきました。

そんな現状を変えたい。

そう思って始めたのが、行政書士・東久保理絵先生との共催による「縁ディングノート書き方セミナー」でした。

港区立産業振興センターを会場に、春の桜の季節にスタート。

全6回で構成されたこのセミナーの初回は、講座で学んだ導入セミナーを筆者が担当しました。

2回目以降は縁ディングノート付きで3,300円の有料セミナーとし、FPや税理士をお呼びして終活・相続のミニセミナーを交えながらノートを書き進める形式としました。

結果的に計5名の参加者様と4か月にわたり、学びと気づきの時間を共有することができ、

「参加して良かった」「家族の問題点に気づけた」などの感想をいただきました。

現在、来年1月からの第二クール開催も企画中です。

2 住宅営業として考えること

念願のマイホームを手にする瞬間、それは売買代金の決済日です。

このとき買主は新しい家の鍵を手にするのです。

そこには「夢のマイホームを手にした喜び」と同時に、実は「相続の始まり」という入り口も隠れています。

 

近年、住宅価格の高騰により、夫婦でペアローンを組み共有名義にするケースが増えています。

また、親から住宅資金援助を受けた場合も、共有登記を行うことが多いです。実は筆者も夫婦共有名義で住宅を購入しております。

筆者は相続コンサルタントの場面では「不動産は共有にしない方がいい」と伝える立場なのに、住宅購入の現場では当然のように共有名義で契約が進んでいく。正直、いつも複雑な気持ちになります。

「これ、将来困るよね」と思いながらも、目の前のご家族は新しい生活の喜びに包まれています。

 

でも、人はいつか必ず死を迎えます。

幸せの絶頂にいる住宅購入者でも例外ではありません。

住宅ローンは団体信用生命保険で清算されますが、

※ペアローンの場合は一方のローンが残ります。

残された家族は「住宅の相続」という現実に直面するのです。

お子さんがまだ小さい場合や子供がいない夫婦の場合、離婚の経験がある場合など遺産分割協議さえままならない事が多くあります。

家族の大黒柱を亡くし、悲しみに暮れる中で、冷静に判断するのはとても困難です。

3 実践していること

筆者は、マイホームを手にする日=決済日に、相続の話をします。

他の不動産業者には「縁起でもない」と反感を買いますが、筆者はこの日こそが最も大切な日だと思っています。

家族の未来を考える絶好のタイミングだからです。

筆者は住宅購入されたご家族皆様に「縁ディングノート(終活・相続の便利帖)」をプレゼントしています。

将来必ず訪れる「相続」について、少しでも考えてもらうキッカケをつくるためです。

4 最後に

著者は、相続と空き家のコンサルタントとして、終活や相続に悩む方々をサポートするとともに、

住宅購入という人生の大きなターニングポイントに立ち会う立場から、

その先にある“将来の相続”についても寄り添いながら支援していきたいと考えています。