■遺言があっても、心までは書ききれない
「遺言さえあれば安心」と思っていませんか?
けれど、実際の現場では“遺言があるのに揉めてしまう”ことがあります。
それは、遺言の中に“気持ち”が書かれていないからです。
たとえば――
「なぜ兄だけが多いの?」
「どうして私の名前がないの?」
そんな言葉が、悲しみの中からこぼれることがあります。
もちろん、遺言の中には「付言事項」と呼ばれる想いを添える欄もあります。
そこに「長女には介護を任せていたから」などと書くことで、気持ちは少し伝わります。
けれど、付言では人の心のすべてを語りきれないのです。
だからこそ、私は「縁ディングノート」という形で、
“もう少し深く気持ちを書く場”を持つことをお勧めしています。
■想いを“書き添える”ためのノート
縁ディングノートは、単なるエンディングノートではありません。
“縁”を大切に、自分の人生をふり返り、
これからどう生きたいか、誰に何を伝えたいかを綴るノートです。
遺言が「財産の分け方を示すもの」だとすれば、
縁ディングノートは「心の想いを伝えるもの」。
「どうしてその選択をしたのか」
「どんな想いで生きてきたのか」
「家族に何を残したいのか」
その背景を書き残すことで、家族の納得と安心が生まれます。
■書くことで見えてくる“自分の人生”
不思議なことに、縁ディングノートを書くと、
自分の生き方が少しずつ整理されていきます。
誰に感謝を伝えたいのか、
何を大切にして生きてきたのか、
そして、これからどうありたいのか。
書くたびに心の奥が静かに整い、
「今を大切に生きよう」と思えるようになります。
これは“死”の準備ではなく、“生き方の再確認”なのです。
■家族との会話を生み出す魔法のノート
縁ディングノートの本当の力は、書いたあとに現れます。
ノートをきっかけに、家族との対話が始まるのです。
「お母さん、こんなふうに考えていたんだね」
「お父さん、そんな想いがあったんだ」
その会話が、家族の心をつなぎ、
遺言の内容を“理解”から“納得”へと変えていきます。
たとえ意見が違っても、
「話し合える家族」になれる――
それが縁ディングノートの一番の力です。
■心も一緒に残すという選択
相続とは、財産を分けることだけではありません。
感謝や愛情、人生の軌跡といった“心の財産”を受け渡すこと。
遺言が財産の整理を助けるものなら、
縁ディングノートは“心をつなぐ道しるべ”。
どちらか一方ではなく、
ふたつを組み合わせることで、
本当にあたたかい「縁まんな(円満)相続」が実現します。
■おわりに
遺言は大切です。
けれど、それだけでは伝わらない想いがあります。
付言では語りきれない“心の声”を、
縁ディングノートに書き残してみてください。
あなたの言葉が、家族の不安をやさしく包み、
未来の笑顔を守る力になります。
――その一冊が、あなたの想いをつなぐ「心の遺言」になるのです。
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(文責:一橋香織)