はじめに 〜過去を知り、未来へ活かす〜

縁ディングノートプランニング協会理事の髙橋美春です。著者は、縁ディングノートのセミナーを6回にわたり開催していますが、その中で「歴史を振り返る」ことに重きを置いています。なぜ歴史が大切なのか、前回に引き続きお話しします。

 

学校の歴史の授業でも、「なぜ過去のことや歴史を学ぶ必要があるのか」と考えたことがある方も多いのではないでしょうか。

 

歴史を学ぶ理由のひとつは、「先人たちの知恵」を学ぶことです。 同じ過ちを繰り返さないことも大切ですが、それを築いてきた人々が奮闘し、勝ち取ってきた未来が今であることを、当たり前と思わず、尊敬と感謝の気持ちを持つことが重要だと考えています。

 

著者は、金融に強い相続コンサルタントとして多くのご相談を受けています。その中で、承継がうまくいかない、相続がうまくいかない根本的な原因には、相互理解やお互いを敬い、感謝する気持ちが足りないことが多いと感じます。

 

これを解決する方法のひとつが、歴史を学ぶことだと確信しています。

金融の歴史なくして有価証券の承継は語れない

著者は、長らく金融業界に身を置いていますが、相続コンサルタントとして、特に有価証券の承継で必要なのが、歴史を知ることです。生命保険は被保険者が亡くなると契約が終了しますが、有価証券や損害保険は承継が重要な意味を持ちます。特に有価証券の承継には、これまでの経緯を知っているかどうかで大きな差が生まれます。

 

しかし、弟が早くに亡くなり、一人っ子になってしまった為、両親を安心させるもっと安定した仕事をということで、役者の道を諦め先生になりました。
高校教員、大学教授と終えた後、役者である孫の健太朗、銀二郎の舞台をよく見にきてくれました。

 

有価証券の承継や相続に向き合うとき、避けて通れないのが金融の歴史です。証券市場の変遷、経済の浮き沈み、金融制度の変革——これらを知らずに相続や承継を語ることはできません。歴史を学び、理解し、そこに生きた人々の想いを受け継ぐことこそが、本当の意味での承継なのです。この業界にいる限り、歴史なくして承継は成り立ちません。

「歴史は語る」証券業界の先輩からの学び

この分野を極めようと思ったとき、証券会社の先輩に助言を求め、あることに気づきました。

 

「この業界に身を置く先輩たちは宝だ」と。

 

著者が証券業界に入ったのは2005年。当たり前にネットがあり、当たり前に特定口座がありました。 しかし、それに至るまでの経緯や業界の変遷は、ニュースでしか知らなかった世代にとって未知の世界でした。

 

戦後から現在に至るまでの経緯、ITの急激な発展の恩恵を受ける前の世代の奮闘、戦後復興の勢い、バブル景気、バブル崩壊後の「失われた20年・30年」と呼ばれた平成の時代——これらを経済の最前線で体感してきた証券業界の先輩方の話を聞くことで、尊敬と感謝の念があふれました。

 

こうした知識と経験の伝承こそが「承継」であり、年長者は感謝の気持ちを持って下の世代に託し、若年層は尊敬と感謝を持ってさらに次の世代へより良い形で伝えていく。これこそが、承継に必要な姿勢ではないかと著者は考えます。

承継の本質 〜歴史を学ぶことの意味〜

当協会代表の一橋がセミナーで、イギリスの歴史学者アーノルド・J・トインビーの「神話を忘れた民族は100年で滅びる」という言葉を引用し、「歴史を学ばなかった民族は100年で滅びる」と伝えています。

 

著者はセミナーで、「家族の歴史を学ばなかった家族は、もっと早く滅びる」と話しています。会社や業界の歴史もまた、伝承が止まると血液が循環しなくなり、衰退していくものです。

 

本来、会社は永遠の命を持つと言われていますが、2024年の企業倒産件数は、2013年以来11年ぶりに1万件を超えました。

 

渡す側、受け取る側の姿勢が整わないままでは、承継は成功しません。どちらにも課題があるからこそ、うまくいかないのではないでしょうか。

 

渡す側は、いつまでも権力や地位、名誉に執着したり、過去の栄光を引きずって受け取る側に押し付けてはいけません。

 

受け取る側も、もらうのが当然という態度ではなく、そこに至るまでの苦労や努力に思いを馳せ、尊敬と感謝の気持ちを持つことが必要です。

 

このようなお話を続けていると、自分の歴史や大切な人の歴史を振り返るだけでなく、企業においても会社の歴史を社員と共に振り返りながら、承継のためのエンディングノートを作成したいという声をいただくようになりました。

承継は歴史の架け橋 〜過去を未来へつなぐ使命〜

 

「歴史を学び、将来に伝えることこそが承継である。承継においては、渡す側と受け継ぐ側の心の在り方が大切である。」

 

これは、家族・企業・すべての世代交代に共通するものではないでしょうか。

 

承継とは、過去を知り、それを大切にしながら未来へとつなげることです。

 

歴史を学び、受け継ぎ、未来に活かす。

 

それが、私たちが果たすべき使命なのです。

 

過去を敬い、未来を築くために、私たち一人ひとりが歴史を学び、受け継ぎ、そして次の世代へとつなげていく責任があります。承継とは単なる引き継ぎではなく、そこに込められた想いを理解し、よりよい形で未来へ託すこと。今こそ、歴史を活かし、未来への礎を築いていきましょう。(文責:理事髙橋美春)